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【VALORANT】なぜファントムの使用率は上がったのか?VCT 2025〜2026のデータから変化の原因を分析する【VALORANT×データ分析】


目次

導入:ファントムが増えた原因は何なのか?

はじめに

こんにちは、家系です。今回はVALORANTの競技シーンにおけるファントムの使用率変化について分析を行います。

VCT 2025シーズンから2026年のKickoffにかけて、競技シーンでファントムを持つプロ選手が目に見えて増えています。Americasリージョンではヴァンダルとファントムの使用率が完全に逆転する事態にまで至りました。「最近プロがファントム持ってること多いな」と感じている方も多いのではないでしょうか。

ではこの変化は何が原因で起きたのでしょうか?候補としてはマッププールの変更、エージェント構成の変化、パッチによる武器バランス調整などが考えられます。今回は競技シーンの実データを使って、候補を一つずつ検証していくことで「ファントム使用率上昇の本当の原因」を突き止めてみたいと思います。

使用したデータ

今回はVCT 2025年シーズンから2026年Kickoffまでの全大会の武器使用率データとエージェントピック率データを使用します。対象大会は以下のとおりです。

  • 2025 Kickoff(Americas, EMEA, Pacific)
  • Masters Bangkok(International)
  • 2025 Stage 1(Americas, EMEA, Pacific)
  • Masters Toronto(International)
  • 2025 Stage 2(Americas, EMEA, Pacific)
  • Champions 2025(International)
  • 2026 Kickoff(Americas, EMEA, Pacific)

武器使用率は「ラウンド中にその武器を使用した回数 ÷ 総ラウンド数 × 100」で算出されています。5人のプレイヤーそれぞれが独立してカウントされるため、1ラウンドあたりの使用率は最大500%になる点にご留意ください。


分析:候補を一つずつ検証してファントム使用率上昇の原因を突き止める

分析①:ファントム使用率はどのくらい上がったのか?

まず変化の実態を確認します。全リージョンの全体(Both)のデータを大会ごとに並べると以下のようになります。

時期Americas P%EMEA P%Pacific P%
2025 Kickoff23.7914.5221.86
2025 Stage 123.1815.3621.47
2025 Stage 229.6923.5228.35
2026 Kickoff34.3423.3224.98

ヴァンダルとファントムの使用率差(V-P差分)で見るとさらに変化が明確です。

時期Americas V-PEMEA V-PPacific V-P
2025 Kickoff+13.21+31.94+17.95
2025 Stage 1+14.54+30.60+15.86
2025 Stage 2-0.91+13.73+2.48
2026 Kickoff-10.27+12.48+6.67

わかること

  • 全リージョンでファントム使用率は上昇傾向。 ただしリージョンごとに上昇の速度と到達点に大きな差がある。
  • Americasが最も急激なファントムシフト。 23.79%→34.34%(+10.55pp)で、2025 Stage 2で初めてヴァンダルを逆転。2026 KickoffではV-P = -10.27と完全にファントム優位。
  • Pacificでは上昇幅が小さく(+3.12pp)、依然としてヴァンダル優位。
  • 2025 Stage 1→Stage 2の間に全リージョンで一斉に急激な上昇が起きている(Americas +6.51pp、EMEA +8.16pp、Pacific +6.88pp)。漸進的ではなく特定の時期に集中した変化。

さらにサイド別に見ると、防衛側でファントムシフトが先行していることも確認できました。Americasでは2025 Stage 2の時点で防衛側が先にファントム逆転(V-P = -6.88)し、攻撃側はまだヴァンダル優位(V-P = +5.05)でした。その後2026 Kickoffで攻撃側も逆転しましたが、防衛側の方がより強い逆転(-13.87 vs -6.68)を示しています。

ここまでで変化の実態を把握しました。次にこの変化の原因として考えられる候補を一つずつ検証していきます。


分析②:マッププール変更による影響

最初に検証するのは「マッププールが変わってファントムが有利なマップの比重が増えたのでは?」という仮説です。

Americas 2025 Kickoffと2026 Kickoffの共通マップ(Haven、Bind、Split、Abyss、Pearl)の5マップについてファントム使用率の変化を見てみます。

マップ旧P%(2025 Kickoff)新P%(2026 Kickoff)変化幅
Haven23.3340.77+17.44
Split23.6040.56+16.96
Abyss16.3930.08+13.69
Pearl26.0936.00+9.91
Bind27.1235.00+7.88

全5マップでファントム使用率が上昇しています。 特定のマップだけで起きた変化ではありません。

さらにマッププール変更の寄与を定量化しました。旧大会のラウンド比率を新大会のファントム率に適用した仮想値を計算し、実測値との差をマッププール効果としています。

リージョンマッププール効果
Americas-0.34pp
EMEA+1.40pp
Pacific-0.68pp

3リージョンすべてでマッププール効果は-0.68〜+1.40ppと極めて小さく、全体の変化幅(+3〜+10pp)のごく一部しか説明できません。

結論:マッププール変更は原因ではない。 ファントム率はマップを問わず広範に上昇しており、マッププールをいくら入れ替えてもこの変化は説明できません。


分析③:エージェント構成による影響

次に検証するのは「ファントムを多く使うエージェントのピック率が増えた結果、全体のファントム率が引き上げられたのでは?」という仮説です。

Americas 2025 Kickoff → 2026 Kickoffの主要エージェントの変化を見てみます。

エージェントΔピック率新P%効果の方向
Viper+35.7339.80ファントム↑
Waylay新規(53.25%)35.64やや↑
Yoru+15.5024.28ファントム↓
Chamber+11.8113.43ファントム↓↓
Fade+10.7436.90ファントム↑
Breach-35.11
Raze-33.63

ヴァイパー(ピック率+35.73pp、P%=39.80%)はファントム率を押し上げる方向に作用しますが、チェンバー(P%=13.43%)やヨル(P%=24.28%)の増加は押し下げる方向に作用しています。構成効果は押し上げと押し下げが相殺し合っており、主因とは言えません。

一方で、もっと重要な発見がありました。同一エージェント内でのファントム使用率の変化です。両大会でデータのある主要14エージェントのうち、12体(86%)で同一エージェント内のファントム使用率が上昇していました。

エージェント旧P%新P%ΔP%
Omen25.2446.90+21.66
Killjoy8.9429.80+20.86
Skye26.7746.48+19.71
Fade19.6936.90+17.21
Astra20.4036.24+15.84
Viper26.4939.80+13.31
Brimstone23.2234.23+11.01
KAY/O27.3433.90+6.56
Yoru19.6824.28+4.60
Sova21.4325.56+4.13

エージェントに関係なくほぼすべてでファントム率が上がっているということは、「どのエージェントを使うか」ではなく「武器そのものの選好が変化した」ことを意味しています。

リージョン間の差を説明するのはエージェント構成

ただしエージェント構成は「リージョン間の差」を説明する副次的な要因としては有効です。

特にPacificではヨルのピック率が8.49%→77.11%と爆発的に増加しています。ヨルのファントム使用率は9.38%と全エージェント中最低水準です。つまりPacificでは最もピックされるエージェントが最もファントムを使わないという構造になっており、これが全体のファントム率上昇を大幅に抑制しています。Pacificのファントム率上昇が+3.12ppにとどまった主な原因の一つです。

結論:エージェント構成は主因ではない。86%のエージェントで武器そのものの選好が変化しており、構成に依存しない要因が存在する。ただしリージョン間の差はエージェント構成で説明できる。


分析④:Patch 9.10のバフによる影響

マッププール変更でもエージェント構成でも説明できないとなると、残る候補は武器そのもののバランス調整です。

Patch 9.10(2024年11月19日)ではファントムのダメージ減衰距離が変更され、ヘッドショット1発キル距離が15mから20mに拡大されました。この5mの差は一見小さく見えますが、VALORANTの多くの交戦ポイントをカバーする重要な変更です。

今回のデータセットの全大会はPatch 9.10適用後のため、パッチ前後の直接比較はできません。しかし「バフ後にどのような速度でプロシーンに浸透したか」を追うことができます。

時期(概算)Americas P%EMEA P%Pacific P%
2025 Kickoff(パッチ後2-3ヶ月)23.7914.5221.86
2025 Stage 1(パッチ後4-6ヶ月)23.1815.3621.47
2025 Stage 2(パッチ後8-10ヶ月)29.6923.5228.35
2026 Kickoff(パッチ後14ヶ月以上)34.3423.3224.98

パッチ直後の2025 KickoffからStage 1にかけてはほぼ横ばいで、バフに対する即座の反応は見られません。しかしStage 1→Stage 2で全リージョン一斉に大幅上昇が起きています。

なおPatch 11.08(2025年10月)はヴァンダル/ファントム両方のリコイル安定性向上でありファントム固有のバフではなく、データ上も追加的なファントム率の押し上げは確認されませんでした。


考察:分析結果を整理する

各仮説の判定

仮説判定根拠
マッププール変化棄却全共通マップで広範にP%が上昇。マッププール効果は最大+1.40pp。
武器バランス調整(Patch 9.10)最有力全マップ・86%のエージェントで広範に上昇。これ以外では説明がつかない。
エージェント構成効果副次的構成効果は相殺的で主因ではない。ただしリージョン間差の説明に有効。
サイド別変化支持(Bの表れ)防衛側から先行し攻撃側へ波及。パッチバフの浸透プロセスを反映。

ファントムの強化が主要因としたとき、バフに対する即座の反応は見られなかったこと、Stage 1→Stage 2で全リージョンで一斉に上昇した要因として、「パッチ適用→ランク戦での知見蓄積→スクリムでの採用→大会での実装」というプロセスをたどって競技シーンに影響を及ぼした、などが考えられます。

各要因の寄与度

  • Patch 9.10のファントムバフ:約80〜90% — 全マップ・全エージェントでの広範な上昇はこれによるもの
  • エージェント構成変化:約5〜15% — リージョン間の差を説明する副次的要因
  • マッププール変更:約0〜5% — 極めて小さい寄与

結論:Patch 9.10のバフが根本原因、プロシーンには数ヶ月かけて浸透した

この記事のまとめ

この記事のまとめ

  • ファントム使用率上昇の根本原因はPatch 9.10によるHS1発キル距離の15m→20mへの拡大
  • マッププール変更の寄与は最大+1.40ppと極めて小さく、全マップで広範にファントム率が上昇しているため主因ではない。
  • 86%のエージェントで同一エージェント内のファントム率が上昇しており、エージェント構成ではなく武器そのものの選好が変化した。
  • パッチ適用後、プロシーンへの浸透には数ヶ月のラグがあり、2025 Stage 2から本格的に表面化。防衛側から始まり攻撃側へ波及した。
  • リージョン間の差はエージェント構成で説明可能。特にPacificでは**ヨルの爆発的増加(P%=9.38%)**がファントム率を抑制。

さいごに

今回はVCTの競技データを用いてファントム使用率の上昇が何に起因するのかを分析しました。マッププール説やエージェント構成説を一つずつ検証して棄却し、最終的にPatch 9.10のバフが圧倒的な主因であることを突き止めることができました。パッチ変更がプロシーンに数ヶ月のラグで浸透していくプロセスも個人的に面白い発見でした。

皆さんはランクで普段ヴァンダルとファントムのどちらを使っていますか?今回の分析結果を踏まえると、競技シーンでのファントムシフトは今後もさらに進む可能性がありそうです。ぜひ感想や意見をXで共有していただけると嬉しいです。

この記事のほかにもVALORANTの分析を行った記事を書いているのでよければ読んでみてください。またXでもこの記事についてのことやそのほかの分析を行っているので良ければ是非フォローをお願いします。それではまた次回。

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