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【VALORANT】ファーストブラッドを取ったチームは本当に有利なのか?FDリカバリー力をデータで検証する【VALORANT×データ分析】

目次

導入:ファーストブラッドはどこまで有利なのか?

はじめに

こんにちは、家系です。今回はファーストブラッド(FB)の価値と、強豪チームの「FDリカバリー力」に関する分析を行います。

VALORANTにおいてファーストブラッド(FB)を獲得するということは、ラウンド序盤で5v4の人数有利を作ることを意味します。VALORANTコミュニティでは「FBを取ったチームのラウンド勝率は60〜70%程度」という定説が広く知られていますが、実際のVCTプロシーンのデータではどうなっているのか。そして、FBを取られた側──つまりファーストデス(FD)を喫したチームがラウンドを逆転する「FDリカバリー」にはどのような傾向があるのか。今回はこの2つの問いをデータで検証します。

さらに、FDリカバリー率にはチーム間でどれほどの差があるのか、そしてリカバリー成功時にどのロールがキルを記録しているのかまで踏み込んで分析します。FBを取ること以上に、取られた後の対応力こそがチーム力の指標ではないか──この視点から、VCTのキルログデータを読み解いていきます。

使用したデータ

本分析では、VCTプロシーンのキルイベントログを使用しています。データの概要は以下のとおりです。

項目内容
対象大会VCT 2025 Kickoff(Americas / EMEA / Pacific)、Valorant Champions 2025、VCT 2026 Kickoff(Americas / EMEA / Pacific)
キルイベント数66,454件
分析対象ラウンド数8,042ラウンド(相手5人全員を倒した全滅ラウンドのみ抽出)
全ラウンド数9,695ラウンド(455試合)
参加チーム数41チーム(265選手)
マップ種類11種類(Ascent, Split, Haven, Bind 等)

各ラウンドの最小キル発生時刻(time列)を持つイベントをファーストブラッド(FB)として定義し、その被キル者側のチームを「FDを喫したチーム」として扱っています。なお、元データのWINNER列はマップ勝者(そのマップを制したチーム)を示しており、ラウンド単位の勝者ではないことが判明したため、キルデータから「相手5人全員を倒した」全滅ラウンド(全体の約83%)を抽出し、ラウンド勝者を正確に判定しています。スパイクの設置・解除による勝敗やタイムアウト勝利のラウンドは判定対象外である点に注意が必要です。


分析:FDリカバリー力の実態を数字で追う

分析①:FB獲得チームのラウンド勝率はどの程度か?

まず検証するのは、最も基本的な問いです。「仮説:FBを獲得したチームは、コミュニティで語られる定説どおり60〜70%程度のラウンド勝率を示す」──FBによる人数有利がプロシーンでどの程度勝敗に直結するのかを、全滅ラウンド8,042件のデータで確かめます。

状況ラウンド数割合
FBを取ったチームが勝利5,62569.94%
FBを取られたチームが逆転(FDリカバリー)2,41730.06%
FB獲得チームの勝率は69.9%──約7割のラウンドを制する

わかること

FB獲得チームのラウンド勝率は69.94%であり、コミュニティで語られる「60〜70%」の定説とほぼ一致しました。VCTプロシーンにおいても、FBによる5v4の人数有利はラウンド勝率に大きく影響しています。一方で、約30%のラウンドではFBを取られた側が逆転しており、FDリカバリーは決して不可能ではないことがわかります。

69.94%という数字は、FBの重要性を改めて裏付けるものです。噛み砕いて言うと、FBを取ったチームは約10回中7回そのラウンドを勝利しているということになります。ラウンド序盤の最初の1キルが、そのまま勝敗を大きく左右していると言えます。

ただし、残りの約30%でFDリカバリーが成功している点も見逃せません。3割という数字は決して小さくなく、チームによってはこのリカバリー率に大きな差がある可能性があります。次の分析でチーム別の内訳を確認します。

仮説判定:支持。FB獲得チームの勝率は69.94%であり、コミュニティの定説(60〜70%)と整合する結果となった。


分析②:チーム別FDリカバリー率──逆境に強いチームはどこか?

次に検証するのは、チーム間の差です。「仮説:一部のチームはFDリカバリー率が全体平均(30.06%)を大きく上回り、FBを取られても高い確率で逆転できる」──これをチーム別のデータで確認します。

FDラウンドが一定数以上あるチームについて、FDリカバリー率を算出しました。まずはリカバリー率の上位5チームと下位5チームを比較します。

FDリカバリー率 TOP 5

順位チームFDラウンド数FD逆転数リカバリー率
1KRÜ Esports1636942.33%
2FULL SENSE1003939.00%
3100 Thieves2067234.95%
4Team Secret953334.74%
5ZETA DIVISION933234.41%

FDリカバリー率 BOTTOM 5

順位チームFDラウンド数FD逆転数リカバリー率
41PCIFIC Esports671623.88%
42Evil Geniuses1643823.17%
43Team Vitality2054722.93%
44VARREL761621.05%
452Game Esports29517.24%
KRÜの逆転率42%、2Gameは17%──FDリカバリー力に大きな格差

わかること

FDリカバリー率にはチーム間で最大25.09ppの差があります。KRÜ Esports(42.33%)は全体平均30.06%を12.27pp上回っており、FBを取られても約4割のラウンドを逆転しています。FULL SENSE(39.00%)、100 Thieves(34.95%)、ZETA DIVISION(34.41%)も平均を上回る逆転力を示しています。一方、VARREL(21.05%)やTeam Vitality(22.93%)はFBを取られるとラウンドを覆すのが難しい傾向にあることがわかります。

ここまでで、リカバリー率の分布を把握しました。注目すべきはKRÜ Esportsの42.33%です。FBを取られた163ラウンドのうち69ラウンドを逆転しており、およそ5回中2回以上を覆している計算になります。全体平均が30.06%であることを考えると、KRÜの逆転力は際立っていると言えます。

なお、2Game Esports(17.24%)はFDラウンド数が29と他チームに比べてサンプルが少ないため、数値のブレが大きい可能性がある点に注意が必要です。VARREL(21.05%、76ラウンド)やTeam Vitality(22.93%、205ラウンド)については十分なサンプルがあり、FBを取られた際の立て直しに課題を抱えている傾向がより信頼できる数値として現れています。

仮説判定:支持。KRÜ Esports(42.33%)をはじめ複数のチームが全体平均(30.06%)を大きく上回るFDリカバリー率を示した。チーム間の差は最大25.09ppに達しており、FDリカバリー力にはチームごとに明確な差がある。


分析③:FDリカバリー時にどのロールがキルを記録しているのか?

ここまででFDリカバリーの全体像とチーム差を確認しました。次に検証するのは、リカバリーの「中身」です。「仮説:FDリカバリーに成功したラウンドでは、デュエリスト以外のロール(特にイニシエーター)のキル貢献率が通常ラウンドより高い」──人数不利の状況では情報収集やユーティリティの重要性が増すため、イニシエーターの役割が高まるのではないかという推論に基づく仮説です。

FDリカバリーに成功したラウンドと、通常のFBウィンラウンド(FBを取った側がそのまま勝利)のそれぞれについて、勝利チーム側のロール別キル貢献割合を算出しました。

ロールリカバリーラウンド通常ラウンド
Initiator27.40%25.60%+1.80pp
Controller29.30%29.20%+0.10pp
Sentinel13.80%14.00%-0.20pp
Duelist29.40%31.20%-1.70pp
リカバリー時はInitiatorが+1.8pp増加、Duelistが-1.7pp減少

わかること

FDリカバリー成功ラウンドでは、Initiatorのキル貢献率が通常ラウンドより+1.80pp高く、逆にDuelistは-1.70pp低い傾向が確認されました。ControllerとSentinelはほぼ変化がありません。人数不利の状況では、Sovaのリコンボルト、Fadeのプロール、Breachのフォールトラインといったイニシエーターのユーティリティで情報を取りながら打開する場面が増え、一方でデュエリストが先陣を切るエントリーの形が崩れるため、デュエリストのキル貢献が相対的に下がっていると考えられます。

+1.80ppと-1.70ppという差は大きな数字ではありませんが、66,454件のキルイベントから算出された傾向としては注目に値します。FDリカバリーという「通常とは異なる状況」で、ロール別のキル構成にわずかながら変化が生じている点は興味深いと言えます。

具体例として、LOUD vs Cloud9(Haven)のデータを確認します。LOUDはR4とR6でFDを喫しながらリカバリーに成功しています。R4ではCloud9のOXY選手(Neon=デュエリスト)がpANcada選手(Omen=コントローラー)にFBを取りましたが、LOUDはそこから立て直してラウンドを奪取しました。R6でもCloud9のZellsis選手(Killjoy=センチネル)がFBを獲得しましたが、LOUDが再び逆転しています。このように、FBで落ちた選手のロールを問わず、チーム全体で状況を立て直す動きがリカバリー成功の鍵を握っていることが示唆されます。

仮説判定:部分的に支持。Initiatorのキル貢献率がリカバリーラウンドで+1.80pp高く、Duelistは-1.70pp低い傾向が確認された。「イニシエーターの貢献が高まる」という仮説の方向性は支持されるが、差は小さく、劇的な偏りとまでは言えない。


考察:分析結果から考えるFDリカバリー力の本質

ここまでの3つの分析結果を、仮説判定表として整理します。

仮説判定根拠
FB獲得チームの勝率は60〜70%程度支持実際の勝率は69.94%。定説の範囲内。
一部チームのFDリカバリー率は平均を大幅に上回る支持KRÜ 42.33%、FULL SENSE 39.00%と平均30.06%を大きく上回る。最大差25.09pp。
リカバリー時はInitiatorの貢献が高まる部分的に支持Initiator +1.80pp、Duelist -1.70pp。傾向は確認されるが差は小さい。

3つの分析を通じて浮かび上がったのは、「FBは依然としてラウンド勝敗に大きく影響するが、FDリカバリー率にはチーム間で明確な差があり、リカバリー時にはイニシエーターの役割がわずかに高まる」という構図です。

分析①で確認された「FB勝率69.94%」は、FBの重要性を改めて数値で裏付けるものです。約7割のラウンドでFBを取った側が勝利しているという事実は、ラウンド序盤の最初の1キルがいかに勝敗を左右するかを物語っています。デュエリストのエントリーやイニシエーターのフラッシュなど、FBを獲得するための戦術設計がチームにとって最優先事項であることがデータからも裏付けられています。

一方で、約30%のラウンドではFDリカバリーが成功しています。分析②で見たとおり、KRÜ Esportsは42.33%のリカバリー率を記録しており、これは「FBを取られても10回中4回以上逆転する」ことを意味します。全体平均の30.06%と比較すると12.27pp高く、逆境への対応力に優れたチームが存在することは明確です。

分析③では、リカバリーラウンドにおけるロール別キル貢献にわずかな傾向の変化が見られました。Initiatorが+1.80pp、Duelistが-1.70ppという差は、人数不利の局面ではデュエリストのエントリーが機能しにくくなり、代わりにイニシエーターのユーティリティで情報を取りながら打開するケースが増えることと整合します。ただし差の絶対値は小さく、FDリカバリーの成否は特定のロールに大きく依存するものではなく、チーム全体の連携力が最も重要な要素であると考えられます。

寄与度の概算として、FDリカバリー率が5pp向上した場合の影響を試算します。あるチームが1試合で平均24ラウンドをプレーし、そのうちFBを取られるラウンドが約半数(12ラウンド)と仮定すると、リカバリー率が5pp上がれば追加で約0.6ラウンドを獲得できる計算になります。13ラウンド先取のVALORANTにおいて、0.6ラウンドの差は接戦のマップで勝敗を分ける可能性がある数字です。


結論:FBの重要性と、その先にあるチーム力

この記事のまとめ

この記事のまとめ

FB獲得チームのラウンド勝率は69.94%であり、コミュニティの定説(60〜70%)と整合する。FBの重要性はデータでも裏付けられた。

・一方で約30%のラウンドでFDリカバリーが成功しており、FBを取られても逆転は十分に起こりうる。

FDリカバリー率にはチーム間で最大25.09ppの差があり、KRÜ Esports(42.33%)は全体平均(30.06%)を大きく上回る。

リカバリー成功時はInitiatorのキル貢献が+1.80pp増加し、Duelistは-1.70pp減少する傾向がある。人数不利ではイニシエーターの情報ユーティリティを活かした打開が増えると考えられる。

・FDリカバリー率5ppの向上は1試合あたり約0.6ラウンドの追加獲得に相当し、接戦のマップで勝敗を分ける可能性がある。

さいごに

今回の分析を通じて、FBの価値と、その裏側にあるFDリカバリー力の重要性が数値で確認できました。個人的には、KRÜ Esportsの42.33%というリカバリー率が最も印象的でした。約7割のラウンドでFBを取った側が勝つ中で、4割以上のラウンドを逆転するというのは、チームとしての対応力の高さを示していると感じます。

皆さんがVCTの試合を観戦するとき、FBの瞬間だけでなく「その直後のチームの動き」に注目してみてください。リテイクの判断速度、イニシエーターのユーティリティの使い方、残りの4人がどうポジションを調整するか──そこにチームの本質が現れるのではないでしょうか。

最後まで読んでいただきありがとうございます。他の分析記事もぜひご覧ください。

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