こんにちは。以前VCJを観戦していた時に「2ndラウンドは1stラウンドより重要なラウンドである」ということを耳にしました。私も実体験として1stラウンド(ピストルラウンド)を獲得した次のラウンドで2ndラウンドを落としてしまった時、その試合は勝率が低いような気がしています。直感的にも多くの人がこのことに納得してもらえると思うのですが、実際どの程度勝率に変化があるのでしょうか?今回は実際のデータを使ってこの疑問に対して分析を行ってみたいと思います。
今回の分析方法について
使用したデータ
今回はVCT各リーグ(Americas, EMEA, Pacific)のStage2 Regular Seasonで行われた178マップ分の試合から1stラウンドと2ndラウンド、攻守交代後のら1stラウンド(13ラウンド)と2ndラウンド(14ラウンド)の計712ラウンド分のデータを使用します。
分析方法
対象の試合から取得したデータを使って下記の分析を行います。なお以降は1st取得数が◯本、2nd取得数が⬜︎本の場合、「◯(1st)-⬜︎(2nd)」と表記します。
- 3次元ヒストグラムによる視覚化
- 2(1st)-0(2nd)と0(1st)-2(2nd)といった対角上の比較
- 1stの上昇値と2ndの上昇率の比較
- 0(1st)時の結果のばらつきに関する分析
注意点
今回の分析では1stラウンドと2ndラウンドは完全に独立したものとして分析をしています。実際には2ndラウンドを取得できるかどうかは1stラウンドの結果が非常に重要ですが、今回は独立していることに注意をお願いします。
1stラウンドと2ndラウンドはどちらが重要なのか?
分析結果
前述した方法で分析した結果が以下になります。
1st\2nd | 0 | 2 | 3 |
0 | 28.17% | 40.00% | 47.83% |
1 | 18.18% | 50.75% | 54.55% |
2 | 25.00% | 60.00% | 71.83% |
3次元ヒストグラムによる視覚化
上の表をもとに作成したヒストグラムは以下になります。
ここからわかることを以下にまとめます。
- 2(1st)-2(2nd)が最も勝率が高く、0(1st)-1(2nd)が最も勝率が低い。
- 0(1st)において0(1st)-0(2nd)が最も勝率が高く0(1st)-1(2nd)が最も低い。
- 1(1st),2(1st)においては2nd取得数に比例して勝率が上昇している。
- 2ndにおいては取得数にかかわらず比例して勝率が上昇している。
- 1(2nd)において1(1st)-1(2nd)と1(1st)-2(2nd)の差分は3.8%と比較的低い。
対角上の勝率比較
2(1st)-0(2nd)と0(1st)-2(2nd)というように、対角上の勝率を比較することで1stラウンドと2ndラウンドの重要性を比較することができます。今回は下記の3パターンを見ます。
- 2(1st)-0(2nd)と0(1st)-2(2nd)
- 1(1st)-0(2nd)と0(1st)-1(2nd)
- 1(1st)-2(2nd)と2(1st)-1(2nd)
2(1st)-0(2nd)と0(1st)-2(2nd)
2(1st)-0(2nd)と0(1st)-2(2nd)ではそれぞれ以下の結果となりました。
- 2(1st)-0(2nd) : 47.83%
- 0(1st)-2(2nd) : 25.00%
どちらも50%を下回っているものの2(1st)-0(2nd)は0(1st)-2(2nd)より20%以上勝率が高くなっています。この結果を見ると1stラウンドの方が勝利に貢献していると言えます。ただし0(1st)-2(2nd)の中には「大差で負けている状況においてセカンドバイを行った」ラウンドが含まれている可能性があり、そのことを考慮すると一概に1stラウンドの方が勝利に貢献しているとは言えないことに注意が必要です。このケースでは敗北の可能性が高い状態(要因)で少しの可能性に賭けたセカンドバイの結果ラウンド取得(結果)が考えられ因果関係が逆になっています。
1(1st)-0(2nd)と0(1st)-1(2nd)
1(1st)-0(2nd)と0(1st)-1(2nd)ではそれぞれ以下の結果となりました。
- 1(1st)-0(2nd) : 40.00%
- 0(1st)-1(2nd) : 18.18%
1(1st)-0(2nd)と0(1st)-1(2nd)についても2(1st)-0(2nd)と0(1st)-2(2nd)と同様20%以上の差をつけて1stラウンドの方が貢献度が高い結果となりました。またここでも2(1st)-0(2nd)と0(1st)-2(2nd)での注意点で挙げた大差で負けている状況におけるセカンドバイの可能性を考慮する必要があります。
1(1st)-2(2nd)と2(1st)-1(2nd)
1(1st)-2(2nd)と2(1st)-1(2nd)ではそれぞれ以下の結果となりました。
- 1(1st)-2(2nd) : 60.00%
- 2(1st)-1(2nd) : 54.55%
1(1st)-2(2nd)と2(1st)-1(2nd)では5%ほど1(1st)-2(2nd)の方が勝率が高く、1(1st)-1(2nd)の勝率50.75%からの差分を取ると1(1st)-2(2nd) : 9.25%と2(1st)-1(2nd) : 3.8%と2ndラウンド取得の方が勝利に貢献していると言えます。
また前述した2パターンと比較して1(1st)-2(2nd)と2(1st)-1(2nd)では大差で負けている状況におけるセカンドバイが起こる可能性は低いと考えることができます。今回挙げた3パターンの中では最も目的に沿ったデータであると考え、この分析ではここから得られた考察を結論とします。
1stの上昇値と2ndの上昇値の比較
次の分析では1stと2ndそれぞれにおける取得本数増加時の勝率が上昇値に注目します。今回は1stと2ndそれぞれの上昇値の平均値をとって分析を行います。
上昇値の平均値を計算し、以下のような結果が得られました。
0本取得と1本取得時の上昇値を見ると2ndラウンドの方が大幅に高い数値になりました。これは0(1st)-0(2nd)から1(1st)-0(2nd)への勝率が下がっていることが起因しています。この結果についてはこの後の分析でもう少し詳しく分析するので、この分析では考えないこととします。
1本取得と2本取得時の上昇値を見ると1stラウンドの方が3%程度高い数値になっていることがわかります。このことから2ndを多く取得するより1stを多く取得する方が勝利につながると言えます。
0(1st)時の結果のばらつきに関する分析
本題ではないですが、3次元ヒストグラムを見たとき0(1st)時のばらつきが大きいことに気づきます。基本的にはラウンド取得は勝率の上昇につながりますが、0(1st)時のみラウンド取得が勝率の下降につながっています。これついては以下のような考察ができます。
- 大差で負けている場合のセカンドバイによるラウンド取得が0(1st)-1(2nd)で多い。
- データが不足している。
今回は1st,2ndラウンド注目しており全体のスコアは見ていないため上記のような結果となった可能性があります。
まとめ
最後に今回の分析で分かったことをまとめます。
- 対角上の勝率比較では2ndラウンドの方が勝利に貢献している。
- 上昇値の比較では1stラウンドの方が勝利に貢献している。
- 基本的にラウンド取得は勝利につながるが0(1st)のみそうでないときがあった。これは大敗時のセカンドバイなどが原因として考えられる。
今回の分析では明確にどちらの方が優れているとは言えない結果となりました。今回の記事を読んでくださった方はぜひ感想や考えを共有いただけると嬉しいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。この記事が少しでも参考になればうれしいです。この記事のほかにもVALORANTの分析を行った記事を書いているのでこの良ければ読んでみてください。またXでもこの記事についてのことやそのほかの分析を行っているので良ければ是非フォローをお願いします。それではまだ次回。
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