導入:ファントム強化はどの程度効果があったのか?

はじめに
こんにちは、家系です。今回はファントムの強化前後における武器使用率やプレイヤーのパフォーマンスの変化について分析を行います。
VALORANTではラウンドごとにどの武器を選ぶかが重要な判断のひとつですが、特に「ヴァンダル」と「ファントム」は、性能の差異からたびたび議論の的になります。とはいえ、両者の性能バランスは長らく安定しており、パッチによって武器の立ち位置が大きく揺らぐことはあまりありませんでした。
しかし2024年11月19日にリリースされたパッチ9.10では、ついにファントムに対する大きな強化が実施されました。
ファントム
ダメージ減衰の変更:
- 変更前:
0–15m:39ダメージ
15–30m:35ダメージ
30m+:31ダメージ- 変更後:
0–20m:39ダメージ
20m+:35ダメージ
これにより、これまで中距離以遠での火力不足がネックだったファントムが、実用性の高い射程を得る形となり、ヴァンダルとの関係性が再び注目を集めました。
今回は、このパッチによる調整の前後で、ファントムやヴァンダルの使用率、各種パフォーマンス指標にどのような変化が現れたかをデータから比較していきます。
分析:ファントム強化が全体と個人に与えた影響を分析

使用したデータ
今回の分析では、パッチ9.10におけるファントムの強化前後で、実際に選手たちの武器選択やパフォーマンスにどのような変化が生じたのかを確認するため、以下の2種類のデータを使用しています。
① 大会全体の各種スコアデータ
まず1つ目は、2024年〜2025年に開催されたVCTおよびEWCの公式大会のスコアデータです。
対象とした大会は以下のとおりです。
- Pacific 2024 Kickoff
- EMEA 2024 Kickoff
- Americas 2024 Kickoff
- Masters Madrid
- Pacific 2024 Stage 1
- EMEA 2024 Stage 1
- Americas 2024 Stage 1
- Pacific 2024 Stage 2
- EMEA 2024 Stage 2
- Americas 2024 Stage 2
- Champions Seoul
- Pacific 2025 Kickoff
- Americas 2025 Kickoff
- EMEA 2025 Kickoff
- Masters Bangkok
- EWC America Stage 1
- EWC America Stage 2
- EWC EMEA Stage 1
- Pacific 2025 Stage 1
- EMEA 2025 Stage 1
- Americas 2025 Stage 1
- EWC Pacific
これらの大会から計2511ラウンド、K/DやACSなどを使用して分析を行います。各指標の意味や考え方は以下の記事でまとめています。

② TH RieNs選手のパッチ前後の各種スコアデータ
2つ目は、EMEA地域の大会に出場しているTeam HereticsのRieNs選手のパッチ前後の各種スコアデータを用いました。
RieNs選手を選んだ理由は以下の通り。
- ファントムとヴァンダルの両方を使い分けている選手であること
- Team Hereticsのロスターが2024年〜2025年で変更されておらず、役割や構成の影響が少ないこと
- 強化対象であるファントムを実際に使用しており、使用割合の変化も見られること
RieNs選手が出場した大会は以下の通りで、EMEA地域の試合に限定しています。
- EMEA 2024 Kickoff
- Masters Madrid
- EMEA 2024 Stage 1
- EMEA 2024 Stage 2
- Champions Seoul
- EMEA 2025 Kickoff
- EMEA 2025 Stage 1
この分析では、ファントム強化前(パッチ9.10以前)と強化後(パッチ9.10以降)で、RieNs選手の各種パフォーマンス指標にどのような変化があったかを比較し、武器の調整が個人の成績にどう反映されたかを具体的に検証します。
使用した指標は以下の7項目です:
- ACS(平均戦闘スコア)
- KD(キル/デス比)
- ADR(平均ダメージ)
- APR(アシスト率)
- FKPR(1ラウンドあたりのファーストキル率)
- FDPR(1ラウンドあたりのファーストデス率)
- KAST%(キル/アシスト/生存/トレードのいずれかを達成したラウンドの割合)
分析方法
今回の分析では、パッチ9.10で強化されたファントムが実戦でどのように使用され、どのようなパフォーマンスの変化が見られたかを明らかにするため、以下の二つのアプローチでデータを扱いました。
① 各大会の全体スコアを用いた分析
まずは対象とした大会(キックオフからEWCステージ1まで)の全体スコアデータをもとに、全武器に対するファントムとヴァンダルの使用率の推移を集計しました。各大会におけるそれぞれの武器の使用割合を算出し、パッチ9.10(2024年11月19日)を境に、使用傾向がどのように変化したかを時系列で可視化しています。
この分析では選手個人のスタッツを区別せず、すべての選手のスコアデータを用いて、メタ全体の変化を捉えることを目的としています。
② RieNs選手にフォーカスした個人分析
次に、Team HereticsのRieNs選手個人のスコアデータにフォーカスし、パッチ前後での武器別成績の変化を比較しました。
これらをパッチ9.10以前と以後、およびファントムとヴァンダルの使用時に分けて比較し、成績の変動傾向を確認しました。
今回は上記の通り大会全体のトレンドと、選手個人の詳細な成績という二つのレイヤーからファントム強化の影響を分析しています。
分析結果
全体傾向の変化(大会全体スコアから)
ファントム強化前/後 | ヴァンダル使用率 | ファントム使用率 |
---|---|---|
強化前 | 44.895% | 16.321% |
強化後 | 41.572% | 19.807% |
- ファントムの使用率は3.486%増加した
- ヴァンダルの使用率は3.323%減少した
RieNs選手のパフォーマンス比較
ファントム強化前/後 | ラウンド数 | ACS | KD | ADR | APR | FKPR | FDPR | KAST | ヴァンダルキル数(ラウンドあたり) | ファントムキル数(ラウンドあたり) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
強化前 | 1875 | 213.2 | 1.088 | 149.8 | 0.360 | 0.088 | 0.058 | 0.750 | 0.219 | 0.127 |
強化後 | 636 | 207.0 | 1.075 | 143.5 | 0.315 | 0.095 | 0.065 | 0.750 | 0.286 | 0.195 |
- ヴァンダル、ファントムともにラウンドあたりのキル数は強化前後で増加
- ACS,KD,ADR,APRは減少。FKPR,FDPRは増加。KASTは変更なし。
考察:武器別パフォーマンスの変化から見える影響
強化によりファントムが使える場面は増加している

ファントムの強化により全体の傾向として3%以上増加していることから以前と比べるとヴァンダルと同等または効果的である場面は多くなっていると考えることができます。
生存性能が高くなった

強化後に基本指標の多くが低下している中でKASTが変わっていないことから、強化前と比べ生存した回数が多くなった可能性があります(キルやアシストが増えているならACSやADRに影響が出るはず)。ファントム強化による直接的な影響ではありませんがファントムを多く使用することによって生存率が向上したことはファントム強化による間接的な効果の一つといえます。
そのほかにも指標の増減は見られますが、これらはファントム強化による影響よりもチームの戦術や役割の微妙な変更などの外的要因が影響している可能性が高いと考えられるため、今回の考察材料として取り上げません
結論:ファントムは強くなったのか?
この記事のまとめ
最後にこの記事をまとめます。
- 以前よりもファントムは全体としても評価されており出番が増えている。
- 強化による直接的な影響以外にも生存率向上など間接的な影響も考えられる。
- ヴァンダルと比べるとまだ評価は低い
さいごに
今回はファントム強化前後のデータを用いて全体・個人のそれぞれにフォーカスを当て影響有無を分析しました。データからある程度影響は見られましたが、個人的には強化内容から想起される影響と比べると効果は小さかったように感じています。また考慮すべき外的要因が非常に多く分析としての課題は多く残っているので、より良いアイデアが出たら再度分析してみたいと思います。今回の分析が皆様の武器選択の一助になればうれしいです。
この記事のほかにもVALORANTの分析を行った記事を書いているのでこの良ければ読んでみてください。またXでもこの記事についてのことやそのほかの分析を行っているので良ければ是非フォローをお願いします。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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