はじめに
こんにちは。皆さんは普段VALORANTをプレイするときどのようなマウスを使用していますか?昨今のゲーミングマウスは大きく分けて2種類で「左右対称マウス」と左右非対称の「エルゴノミクスマウス」があります。この2つではマウスの形状はかなり異なるのでVALORANTなどのFPSにおけるエイム力に大きく影響を与えることが考えられます。そこで今回はこの影響を可視化するため「左右対称マウス」と「エルゴノミクスマウス」でどれほどパフォーマンスに差が現れるのかデータ分析によって確かめてみたいと思います。
使用したデータ・デバイス
使用したデータ
今回は私自身が被験者となりデータを収集しました。今回の分析では48回分のデスマッチのデータを使用しています。デスマッチを左右対称マウスとエルゴノミクスマウスでそれぞれ24回ずつ、計48回行いデータを取得します。実験順序(今回の場合左右対称マウスとエルゴノミクスマウス)は乱数によるランダムな順序で行います。
また今回の分析では統計学で用いられる「実験計画法」「分散分析」という手法を用いてマウス形状とキーボード(ラピッドトリガーの有無)について、それぞれの効果の差分を見ます。この手法はそれぞれの効果に差分があるかを少ない試験回数で分析することができる有用な手法です。キーボード(ラピッドトリガーの有無)の違いによる効果分析も行っているので併せて読んでいただけると嬉しいです。
使用したデバイス
今回使用したマウスはLogicool G PRO X SUPERLIGHTとRazer DeathAdder V3 Pro になります。Logicool G PRO X SUPERLIGHTは左右対称マウスでVALORANTプロプレイヤーも多く使用していることから今もっとも有名なマウスと言っても過言ではないと思います。Razer DeathAdder V3 Pro は古くからある左右非対称マウスであることから定番のエルゴノミクスマウスとして有名です。
二つのマウス形状をEloShapesで比較すると以下のようになります。
Logicool G PRO X SUPERLIGHT | Razer DeathAdder V3 Pro | |
Length (mm) | 125.0 | 128.0 |
Width (mm) | 63.5 | 68.0 |
Height (mm) | 40.0 | 44.0 |
Weight (grams) | 63 | 63 |
Shape | Symmetrical | Ergonomic |
Hand Compatibility | Right-handed | Right-handed |
Thumb Rest | No | No |
Connectivity | Wireless | Wireless |
Sensor | HERO 25K | Focus Pro 30K |
DPI | 25600 | 30000 |
Polling Rate | 1000 | 1000 |
Side Buttons | 2 | 2 |
Middle Buttons | 0 | 0 |
なお私自身の手の大きさとマウスの持ち方ですが、手長が19.7cm、手幅10.1cmでかぶせ持ちをしています。手の大きさや持ち方から考えるとエルゴノミクスマウスのRazer DeathAdder V3 Proの方がパフォーマンスが高くなると予想しています。
マウス形状の違いによる効果分析結果
マウス形状の違いはパフォーマンスに差を与えるか
上記の条件でデスマッチを行った結果をまとめます。
No. | (Logicool G PRO X SUPERLIGHT) | 左右対称マウス( Razer DeathAdder V3 Pro) | エルゴノミクスマウス||
キル数 | 順位 | キル数 | 順位 | |
1 | 16 | 11 | 35 | 3 |
2 | 30 | 3 | 17 | 5 |
3 | 26 | 6 | 31 | 2 |
4 | 29 | 7 | 36 | 4 |
5 | 37 | 2 | 37 | 3 |
6 | 27 | 4 | 31 | 4 |
7 | 31 | 6 | 21 | 7 |
8 | 31 | 6 | 19 | 5 |
9 | 38 | 2 | 21 | 7 |
10 | 29 | 4 | 23 | 4 |
11 | 24 | 5 | 31 | 3 |
12 | 35 | 4 | 17 | 8 |
13 | 24 | 10 | 38 | 2 |
14 | 40 | 1 | 29 | 4 |
15 | 28 | 4 | 31 | 3 |
16 | 32 | 6 | 27 | 6 |
17 | 29 | 6 | 36 | 3 |
18 | 19 | 10 | 33 | 4 |
19 | 30 | 2 | 37 | 3 |
20 | 26 | 2 | 32 | 4 |
21 | 25 | 4 | 16 | 11 |
22 | 12 | 6 | 34 | 3 |
23 | 25 | 6 | 34 | 6 |
24 | 30 | 5 | 27 | 5 |
平均値 | 28.04 | 5.08 | 28.88 | 4.54 |
中央値 | 29 | 5 | 31 | 4 |
(ばらつき) | 標準偏差6.47 | 2.62 | 7.11 | 2.11 |
また上の表からヒストグラムを作成すると以下のようになります。黄が左右対称マウス、青がエルゴノミクスマウスです。
この結果からわかることを以下にまとめます。
- 平均値、中央値はエルゴノミクスマウスの方が1キル弱大きい。
- ばらつきはエルゴノミクスマウスの方が大きい。
- 左右対称マウスは25~32キル付近に集中しているのに対して、エルゴノミクスマウスは20付近と35キル付近で二つの山がある分布になっている。
また順位でキル数同様にヒストグラムを作成すると以下のようになります。
この結果からわかることを以下にまとめます。
- 平均値、中央値はエルゴノミクスマウスの方が小さい。
- ばらつきは左右対称マウスの方が大きい。
- エルゴノミクスマウスは左右対称マウスと比べて小さい値に集中している。
表とヒストグラムからわずかではありますがエルゴノミクスマウスの方が効果があるように見えます。ここまでの結果からから考えられることを以下にまとめます。
- ラピッドトリガーONの方が良い結果(多いキル数、高い順位)になると考えられる。
- ラピッドトリガーONの方が結果が安定すると考えられる。
今回の結果では見かけ上は効果があるように見えます。しかしデータ数が48回と少ないことを考慮すると少し信憑性にかけるので、ここからは統計的な手法を使ってラピッドトリガーの効果を確かめます。興味のある方は読んでみてください。
統計的手法による分析(分散分析)
この手法を簡単に説明すると「ある2つの条件において同条件内のばらつきと条件間のばらつきに差があるか」を統計的に分析する手法です。条件内のばらつきと条件間のばらつきに差があるということは、条件間のばらつき(今回の場合ラピッドトリガーの効果)は同じ条件でやった時のばらつきとは異なるばらつきである、すなわち指定した条件には効果があると言えるということになります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
詳細な分析手順等は省いて結果を下記に示します。
平方和 | 自由度 | 平均平方 | F値 | |
ラピッドトリガーON/OFF | 8.333333333 | 1 | 8.333333333 | 0.1853224611 |
誤差 | 2023.5 | 45 | 44.96666667 |
ここで求めたF値をF分布の該当する部分と照合します。今回は優位水準を5%としてF(1,45,0.05)≒4.055となるのでF値<F(1,45,0.05)となることよりラピッドトリガーによる効果はないと結論付けます。
まとめ
今回は「マウス形状の違いはパフォーマンスにどれだけ影響を与えるか?」をテーマにデータ分析を行いました。結果としてマウス形状の違いは理論上のみならず、実戦においてもある程度パフォーマンスに影響を与えると言えることがわかりました、ただし理論上母数を増やすとその差はなくなるという結果も得られたため明確な効果の有無は言及できない結果になりました。別に紹介した「ラピッドトリガーの有無はパフォーマンスにどれだけ影響を与えるか?」でも統計的には差がないと言えたことから個人的にはキーボードやマウスの差以上にプレイヤーが持つスキルが重要視されるゲームなのだということがこの分析から気づくことができました。最後にこの記事をまとめると
マウス形状の違いはデスマッチにおいて
- キル数の観点では平均1キル程度の差が出る。
- 順位の観点では平均1位分程度の差が出る。
- 上記の結果からエルゴノミクスマウスの方がやや良い結果(多いキル数、高い順位)になると考えられる。
- ただし統計的手法による分析では効果がないという結論となったため試行回数が増えると
- マウス形状による効果の差は0に近づく。
マウスを選ぶ際は実際に使ってゲームをプレイするまで自分に合ったマウスなのかわからなず、購入に踏み切れないといったことがあるかと思います、そのような皆様の一助になれば幸いです。この記事のほかにもVALORANTの分析を行った記事を書いているのでこの良ければ読んでみてください。またXでもこの記事についてのことやそのほかの分析を行っているので良ければ是非フォローをお願いします。それでは。
コメント