はじめに
こんにちは。今回は今や業界スタンダードとなりつつある「ラピッドトリガー」について分析したいと思います。ラピッドトリガーの有無はどれくらいVALORANTのパフォーマンス向上につながるのか気になったことはありませんか?理論上は間違いなく優れた技術ですが、感覚的に「なんかすごい」事は肌で感じることができても、それが数値としてどれほどパフォーマンスに影響を与えているか言及している方は少なく思えます(少なくとも私は見たことがありません)そこで今回はラピッドトリガーの効果がVALORANTのパフォーマンスに与える影響をデータを使って分析したいと思います。
使用したデータ・デバイス
使用したデータ
今回は私自身が被験者となりデータを収集しました。今回の分析では48回分のデスマッチのデータを使用しています。デスマッチをラピッドトリガーをオン・オフでそれぞれ24回ずつ、計48回行いデータを取得します。実験順序(今回の場合ラピッドトリガーのオン・オフ)は乱数によるランダムな順序で行います。
また今回の分析では統計学で用いられる「実験計画法」「分散分析」という手法を用いてマウス形状とキーボード(ラピッドトリガーの有無)について、それぞれの効果の差分を見ます。この手法はそれぞれの効果に差分があるかを少ない試験回数で分析することができる有用な手法です。マウスの違いによる効果分析も行っているので併せて読んでいただけると嬉しいです。
使用したデバイス
今回使用したキーボードはZENAIM KEYBOARD になります。
ラピッドトリガーON時のキー設定はZETA hiroron選手の設定と同じにしました。(ZENAIM KEYBOARDソフトウェア内からインストール可能)
ラピッドトリガーOFF時のキー設定はON時の設定からラピッドトリガーのみをOFFにしました。APとRPはそれぞれ最小値に設定しているので限りなくラピッドトリガーに近い設定になっています。
ラピッドトリガー有無の効果分析結果
ラピッドトリガーの有無はパフォーマンスに差を与えるか
上記の条件でデスマッチを行った結果をまとめます。
No. | ラピトリON | ラピトリOFF | ||
キル数 | 順位 | キル数 | 順位 | |
1 | 35 | 3 | 21 | 7 |
2 | 17 | 5 | 19 | 5 |
3 | 31 | 2 | 21 | 7 |
4 | 36 | 4 | 23 | 4 |
5 | 37 | 3 | 31 | 3 |
6 | 31 | 4 | 17 | 8 |
7 | 16 | 11 | 31 | 6 |
8 | 30 | 3 | 31 | 6 |
9 | 26 | 6 | 38 | 2 |
10 | 29 | 7 | 29 | 4 |
11 | 37 | 2 | 24 | 5 |
12 | 27 | 4 | 35 | 4 |
13 | 38 | 2 | 37 | 3 |
14 | 29 | 4 | 32 | 4 |
15 | 31 | 3 | 16 | 11 |
16 | 27 | 6 | 34 | 3 |
17 | 36 | 3 | 34 | 6 |
18 | 33 | 4 | 27 | 5 |
19 | 24 | 10 | 30 | 2 |
20 | 40 | 1 | 26 | 2 |
21 | 28 | 4 | 25 | 4 |
22 | 32 | 6 | 12 | 6 |
23 | 29 | 6 | 25 | 6 |
24 | 19 | 10 | 30 | 5 |
平均値 | 29.92 | 4.71 | 27.00 | 4.92 |
中央値 | 30.5 | 4 | 28 | 5 |
(ばらつき) | 標準偏差6.39 | 2.65 | 6.90 | 2.10 |
また上の表からヒストグラムを作成すると以下のようになります。青がラピッドトリガーON、オレンジがラピッドトリガーOFFです。
この結果からわかることを以下にまとめます。
- 平均値、中央値はラピッドトリガーONの方が2キル程度大きい。
- ばらつきはラピッドトリガーOFFの方が大きい。
- ラピッドトリガーONはラピッドトリガーOFFと比べて大きい値に集中している。
また順位でキル数同様にヒストグラムを作成すると以下のようになります。
この結果からわかることを以下にまとめます。
- 平均値、中央値はラピッドトリガーONの方が小さい。
- ばらつきはラピッドトリガーOFFの方が小さい。
- ラピッドトリガーONはラピッドトリガーOFFと比べて小さい値に集中している。
表とヒストグラムから漠然とではありますがラピッドトリガーの効果がわかると思います。ここまでの結果からから考えられることを以下にまとめます。
- ラピッドトリガーONの方が良い結果(多いキル数、高い順位)になると考えられる。
- ラピッドトリガーONの方が結果が安定すると考えられる。
今回の結果では見かけ上は効果があるように見えます。しかしデータ数が48回と少ないことを考慮すると少し信憑性にかけるので、ここからは統計的な手法を使ってラピッドトリガーの効果を確かめます。興味のある方は読んでみてください。
統計的手法による分析(分散分析)
この手法を簡単に説明すると「ある2つの条件において同条件内のばらつきと条件間のばらつきに差があるか」を統計的に分析する手法です。条件内のばらつきと条件間のばらつきに差があるということは、条件間のばらつき(今回の場合ラピッドトリガーの効果)は同じ条件でやった時のばらつきとは異なるばらつきである、すなわち指定した条件には効果があると言えるということになります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
詳細な分析手順等は省いて結果を下記に示します。
平方和 | 自由度 | 平均平方 | F値 | |
ラピッドトリガーON/OFF | 102.0833333 | 1 | 102.0833333 | 2.270200148 |
誤差 | 2023.5 | 45 | 44.96666667 |
ここで求めたF値をF分布の該当する部分と照合します。今回は優位水準を5%としてF(1,45,0.05)≒4.055となるのでF値<F(1,45,0.05)となることよりラピッドトリガーによる効果はないと結論付けます。
まとめ
今回は「ラピッドトリガーの有無はパフォーマンスにどれだけ影響を与えるか?」をテーマにデータ分析を行いました。結果としてラピッドトリガーは理論上のみならず、実戦においてもある程度パフォーマンスに影響を与えると言えることがわかりました、ただし理論上母数を増やすとその差はなくなるという結果も得られたため明確な効果の有無は言及できない結果になりました。最後にこの記事をまとめると
ラピッドトリガーの有無はデスマッチにおいて
- キル数の観点では平均2キル程度の差が出る。
- 順位の観点では平均1位分程度の差が出る。
- 上記の結果からラピッドトリガーONの方がやや良い結果(多いキル数、高い順位)になると考えられる。
- またラピッドトリガーONの方が結果が安定すると考えられる。
- ただし統計的手法による分析では効果がないという結論となったため試行回数が増えるとラピッドトリガーON/OFFの差は0に近づく。
ラピッドトリガー機能付きキーボードは以前と比べると安価になっていますが、それでもなお安いものではありません。購入を迷う皆様の一助になれば幸いです。この記事のほかにもVALORANTの分析を行った記事を書いているのでこの良ければ読んでみてください。またXでもこの記事についてのことやそのほかの分析を行っているので良ければ是非フォローをお願いします。それではまだ次回
おまけ
今回の結果ではやや差があるように見えるものの無限回試行した場合差はなくなるといったような結論が出ました。これはデータとは関係なく私がデスマッチを約50回やって肌で感じたラピッドトリガー効果ですが、ラピッドトリガーがあることによって切り返し撃ちが強い印象を受けました。逆にそれ以外では分析結果通りあまり差を感じることはありませんでした。
個人的にはラピッドトリガーがあるときの方が快適にプレイできているような気がしていますし、効果はあると思っています。今回の結果はあくまで一つの事実として、皆様の考えの参考程度に見ていただけますと幸いです。
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