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【VALORANT】eDPIの高低とゲーム内パフォーマンスの関係を定量的に分析する

目次

導入:eDPIとHS率・ACSの関係を検証する

はじめに

こんにちは、家系です。今回は「eDPIの高低はHS率(ヘッドショット率)やACS(Average Combat Score)と統計的に有意な相関を持つのか」をテーマに分析を行います。

VALORANTプレイヤーの間では「ローセンシのほうがエイムが精密になり、HS率が高くなる」という通説が根強く存在します。マウスの物理的な移動量が大きいほど微調整がしやすいという直感はもっともですし、FPSコミュニティでは長らく「プロはローセンシが多い=ローセンシのほうが強い」と語られてきました。しかし、この通説はプロシーンの実データによって裏付けられているのでしょうか。

そこで今回は、VCT 2026の主要6大会に出場した148名のプロプレイヤーのeDPIとトーナメント成績を突き合わせ、ピアソンの積率相関係数を用いた定量分析を実施します。具体的には「eDPIとHS率の相関」「eDPIとACSの相関」「eDPI帯別の平均値比較」の3ステップで検証を進めます。結論を先取りすると、eDPIとHS率の相関係数はわずかr = −0.13にとどまり、統計的に有意とは言えない水準でした。「ローセンシだからHS率が高い」とは言えない――それがデータの答えです。

使用したデータ

分析に使用したデータは以下の通りです。

項目内容
大会データVCT 2026 Kickoff(Americas / Pacific / EMEA)、Valorant Masters Santiago 2026、VCT 2026 Stage 1(Pacific / EMEA)の計6大会
選手設定データprosettings.net掲載のプロ選手設定情報(DPI・ゲーム内感度・eDPI等)
分析対象eDPIが公開されており、かつ上記大会のトーナメント統計が存在する148名
eDPI範囲96〜569.6
成績集計複数大会に出場した選手はラウンド数による加重平均を算出

なお、HS率やACSは使用エージェントやロールに大きく左右されます。たとえばControllerメインの選手とDuelistメインの選手では、立ち回りや交戦距離が異なるためHS率にも差が出やすい傾向があります。今回の分析は「eDPIとの単純相関」に焦点を絞ったものであり、ロール差を統制した分析ではない点にご注意ください。


分析:eDPIはHS率やACSと相関するのか

分析①:eDPIとHS率の相関

最初に検証するのは、最もよく語られる仮説です。

仮説:eDPIが低い(ローセンシ)プレイヤーほどHS率が高い

148名全員のeDPIとHS率をプロットした散布図が以下になります。横軸がeDPI、縦軸がHS率(%)で、赤の破線は回帰直線です。

図1:eDPI × HS率の散布図(n=148、VCT 2026主要6大会)

散布図を見ると、データポイントは全体的に横方向へ広く分散しており、右下がりの明確な傾向は視認できません。回帰直線はほぼ水平に近く、eDPIが変化してもHS率はほとんど動かないことが一目でわかります。

実際にピアソンの相関係数を算出した結果が以下です。

指標
相関係数(r)−0.13
決定係数(R²)0.017(1.7%)
p値0.12(5%水準で有意でない)
サンプルサイズ148名

噛み砕いて言うと、eDPIはHS率の分散のわずか1.7%しか説明できていません。残りの98.3%はeDPI以外の要因――エイムスタイル、使用エージェント、ポジショニング、クロスヘア配置の習慣、交戦距離の傾向など――に起因していることになります。さらにp値は0.12であり、統計学で一般的に用いられる5%の有意水準を満たしていません。つまり、「この相関は偶然の範囲で説明できてしまう」ということです。

この結果をさらに実感していただくために、eDPIがまったく同じ160のプレイヤー同士を比較してみます。

選手名eDPIHS率主要エージェント傾向
al0rante16044.79%Controller / Sentinel
Demon116037.00%Duelist
crashies16031.87%Initiator
babybay16020.69%Duelist / Sentinel
BuZz16019.57%Duelist

eDPIがまったく同じ160であるにもかかわらず、HS率にはal0ranteの44.79%からBuZzの19.57%まで25.22ppもの差が生じています。eDPIという単一の変数だけではエイム精度を説明できないことが、この比較からも明らかです。

わかること

  • eDPIとHS率の相関係数はr = −0.13と非常に弱い負の相関にとどまる
  • 決定係数R² = 1.7%であり、eDPIはHS率の分散をほぼ説明できない
  • p値 = 0.12で5%有意水準を満たさず、統計的に有意とは言えない
  • 同一eDPI 160のプレイヤー間でもHS率に25.22ppの個人差がある

仮説判定:「eDPIが低いほどHS率が高い」→ 支持されない

分析②:eDPIとACSの相関

次に検証するのは、eDPIと総合的な戦闘貢献度の関係です。HS率だけでなく、キル数やダメージ量を総合的に反映するACSについても同様の傾向が見られるのでしょうか。

仮説:eDPIが低い(ローセンシ)プレイヤーほどACSが高い

HS率と同様の手法で、eDPIとACSの散布図を作成しました。

図2:eDPI × ACSの散布図(n=148、VCT 2026主要6大会)

HS率の散布図以上に、ACSの散布図では回帰直線がほぼ水平であることがわかります。相関係数を算出した結果は以下の通りです。

指標
相関係数(r)−0.03
決定係数(R²)0.001(0.1%)
p値0.71(有意でない)

r = −0.03はほぼゼロであり、eDPIとACSの間には相関が存在しないと断言できる水準です。決定係数R²はわずか0.1%で、eDPIがACSに与える影響は統計的にまったく検出できません。

具体例を挙げると、ハイセンシの代表格であるf0rsakeN(eDPI 569.6)のACSは214.88と全体平均を大きく上回っています。同様にhappywei(eDPI 569.6)も213.30と高水準です。一方、同じく高eDPIのasuna(eDPI 364)は171.50と平均を下回ります。ローセンシ帯に目を向けると、marteen(eDPI 96)が249.57、Cryocells(eDPI 128)が217.00と高い一方、c0m(eDPI 160)は164.60、zellsis(eDPI 172)は150.00にとどまります。eDPIの高低にかかわらず、ACSは完全に個人の実力次第で決まっていることがわかります。

わかること

  • eDPIとACSの相関係数はr = −0.03で実質的に無相関
  • 決定係数R² = 0.1%であり、eDPIはACSをまったく説明しない
  • ハイセンシでもローセンシでも、ACSが高い選手・低い選手が同程度に存在する

仮説判定:「eDPIが低いほどACSが高い」→ 棄却

分析③:eDPI帯別の平均値比較

ここまでで相関係数による検証を行いましたが、もう少し直感的に把握できるよう、eDPIを3つの帯域に分けて平均値を比較します。もし「ローセンシ=高成績」が正しければ、Low帯の平均値が一貫して最も高くなるはずです。

仮説:eDPI帯が低いグループほど、平均HS率および平均ACSが高い

eDPI帯人数平均eDPI平均HS率平均ACS
Low(180未満)39名15329.57%200.11
Mid(180〜280未満)73名22228.50%193.00
High(280以上)36名35027.05%195.51
図3:eDPI帯別の平均HS率・ACS比較(n=148)

HS率に関しては、Low帯の29.57%からHigh帯の27.05%まで2.52ppの差が確認できます。傾向としてはローセンシ帯のほうがわずかに高いのですが、この差は非常に小さいものです。Low帯内だけを見てもHS率は18.00%(zellsis)から44.79%(al0rante)まで約27ppの幅があり、帯間の2.52ppという差は帯内の個人差に比べて誤差の範囲と言えます。

ACSに関してはさらに興味深い結果です。Low帯が200.11、Mid帯が193.00、High帯が195.51と、一貫した右下がりのトレンドが存在しません。Mid帯がもっとも低く、High帯がMid帯を上回るという「逆転現象」が起きており、eDPIが低いほどACSが高いという仮説を直感的にも否定する結果になっています。

わかること

  • HS率はLow帯からHigh帯にかけて2.52pp低下するが、帯内の分散が極めて大きく実質的な差とは言えない
  • ACSはeDPI帯間で一貫した傾向がなく、Mid帯が最低・High帯がMid帯を上回る「逆転」が発生
  • いずれのeDPI帯にも高成績プレイヤーと低成績プレイヤーが混在しており、eDPI帯だけでは成績を予測できない

仮説判定:「eDPI帯が低いほど平均HS率・ACSが高い」→ HS率はごく弱い傾向のみ、ACSは支持されない


考察:分析結果から考えるeDPIとエイム精度の関係

3つの分析ステップの結果を仮説判定表として整理します。

仮説判定根拠
eDPIが低いほどHS率が高い支持されないr = −0.13、p = 0.12(有意でない)、R² = 1.7%
eDPIが低いほどACSが高い棄却r = −0.03、p = 0.71、R² = 0.1%
eDPI帯が低いほど平均成績が高いほぼ棄却HS率差2.52pp(帯内分散に比して微小)、ACS差に一貫性なし

ここまでの結果を一気通貫で振り返ると、eDPIとHS率の間には統計的に有意な相関は認められず、ACSに至ってはほぼ完全な無相関でした。eDPIが説明できるHS率の分散はわずか1.7%に過ぎず、ACSに至ってはわずか0.1%です。

この結果から、プロレベルにおいてはeDPIの高低よりも、個々のエイムスキル・ゲームセンス・ロール特性・チーム戦術のほうが圧倒的に大きな影響を持つと考えられます。寄与度を大まかに推定するなら、eDPIの寄与はHS率に対して最大でも2%未満、ACSに対しては実質ゼロです。

ただし、eDPI帯別比較で確認した2.52ppのHS率差は、方向性としてはローセンシ側がわずかに高い傾向を示しています。サンプルサイズを数百〜数千に拡大した場合、この差が統計的有意性を持つ可能性は残ります。しかし仮に有意であったとしても、2.5pp程度の効果量は実戦で体感できるレベルではないのではないでしょうか。eDPI 160のal0ranteが44.79%、同じeDPI 160のBuZzが19.57%であるという事実のほうが、はるかに雄弁です。

また今回の分析はロール差を統制していないため、「ローセンシ帯にControllerメインの選手が多く含まれ、彼らのHS率が高い」といった交絡変数の影響が混入している可能性もあります。より精密な検証を行うには、ロール別・エージェント別に分けた分析が必要です。これは今後の課題として残しておきます。


結論:eDPIの高低ではHS率もACSも決まらない

この記事のまとめ

この記事のまとめ

  • VCT 2026主要6大会に出場したプロ148名を対象に、eDPIとHS率・ACSの相関を分析した
  • eDPIとHS率の相関係数はr = −0.13(p = 0.12)で、統計的に有意な相関は認められなかった
  • eDPIとACSの相関係数はr = −0.03(p = 0.71)で、実質的に無相関だった
  • eDPI帯別の平均HS率差はわずか2.52ppにとどまり、帯内の個人差(約27pp)に比べて極めて小さい
  • ACSはeDPI帯間で一貫した傾向を示さず、「ローセンシ=高ACS」は成立しない
  • 「ローセンシ=HS率が高い」という通説は、プロシーンのデータでは支持されない

さいごに

個人的には、今回の分析結果は「そうだろうな」と思いつつも、R² = 1.7%という数値で突きつけられると改めてインパクトがありました。eDPIが説明できるのは全体の1.7%だけで、残りの98.3%はまったく別の要因が支配している。これはなかなか強烈なメッセージではないでしょうか。

皆さんの中にも「もっとセンシを下げたほうがHS率が上がるかな」「プロと同じeDPIにすればACSが伸びるかな」と悩んでいる方がいるかもしれません。しかし今回のデータが示しているのは、センシを変えることよりも、エイム練習やクロスヘア配置の改善に時間を投資するほうが遥かに効果的だということです。自分の手に馴染むeDPIを見つけたら、あとはそれを信じてひたすら練習に集中する。それがプロ148名分のデータから導き出せる、最も実践的なアドバイスだと考えます。

今回の分析ではロール差を統制していないため、今後は「Duelist限定」「Controller限定」でのロール別相関分析にも挑戦してみたいと思います。他の記事ではエージェントのピック率やマップ別勝率なども分析していますので、ぜひそちらもあわせてご覧ください。

X(旧Twitter)ではこうした分析の速報やグラフを先行公開しています。フォローしていただけると励みになります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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